この日は朝から肌寒い曇り空である。今日はダブリン市内で見るべきものを見る予定である。

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まずオコンネルストリートに面した中央郵便局。ここは1916年のイースター蜂起の時共和国宣言が読み上げられた場所として有名だ。蜂起は鎮圧され建物も破壊され1926年の修復される。。建築は1814年で堂々たる柱廊玄関であるが(昨日の写真参照)内装はアールデコ様式。
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銀行内にある英雄ク・ホリンの像
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アイルランド銀行(1729)。中には入れず。

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ついにこの場所へ。
なんだかんだ言っても僕がアイルランドに行かねばと思った最も中心的な場所がここトリニティ・カレッジである。ここのライブラリーを見る事であり、ケルズの書を見る事である。最大のお楽しみは後半にとっておいたのだ。
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旧図書館の主要閲覧室(ロングルーム)長さ65メートル、約20万冊。
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図書館の外観
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ケルズの書。もちろん撮影など厳禁なのでこれはイメージです。
噂では大学にあるレプリカと同じものが展示されているとも聞いていたので(まさか!)少し心配だったがしっかり本物が2冊(マニュスクリプトなので2ヴァージョン)見る事ができた。
展示の仕方もかなり凝っており、かつ僕としては初めて見る同時代の他のマニュスクリプト、「the book of armagh」「the garland of howth」「the book of mulling」などが見れたのが嬉しかった。またオガム文字ogham scriptの説明も丁寧になされていた。また使われた顔料もすべてわかったのでメモをとった。これらはどの図録にも載って無い。それが残念である。
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オガム文字について(これは国立考古学博物館の説明のメモ)
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まるで鞄のような書物。まわりは牛革で覆われている。こういう形は初めて見るものだ。
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図書館向かいの校舎(指が写ってしまった)
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カッレッジの学食で昼食をとることに。学生は世界中似たようなものだと思う。東京の大学の学生達をふと思い出す。
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次に向かったのはアイルランド国立美術館。ベンソン&フォーサイスの設計。
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最初、順路順に見ていったのだがあるエリアの水準があまりにも低くがっかりしかけたころ、後半になってフェルメール、カラヴァッジオ、ボッシュ、クラナッハ、グレコ、ウッチェロ、リッピ、フラアンジェリコ、ブリューゲル、べラスケス等等、傑作が連発される。作品を絞って半分にすればよいのにと思うのは大きなお世話か。傑作が傑作である事を分からせる為に前半部分があったりして。
カラヴァッジオ、フェルメールの画面から立ち去りがたく。
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美術館のそばに大統領の執務室があるらしく、近所では政治集会のようなものが開かれ、人が続々と集まっていた。
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途中、国税庁の税金博物館に寄る。日本にもあるのだろうか。
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チェスター・ビーティー・ライブラリーのエントランス。
ここは始めは予定していなかったのだが、直感のようなものに惹き付けられて訪れる。これがアタリ!だった。チェスター・ビーティーはアイルランドに生まれ、イギリスを経てアメリカに渡り財産を築いた男らしい(そのようなビデオが流れていた)。ここは彼が個人で集めたものを寄付してできた美術館である。蔵書がどれもこれも半端無く素晴らしい。ヨーロッパのマニュスクリプトも凄いが美しいコーラン、インドの書物、中国や日本の書物などを大量に収蔵しているらしい。展示スペースはさほど大きくない。またパピルスも大量にあり、現存する最古のパピルスの聖書の断片には驚いた。
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外観
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驚く程美しいコーランの数々。(撮影は不可なのでイメージです)
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ただ大変残念な事は先月までやっていた伊勢物語展が終わっていて見れなかったこと。ショップにいた日本人スタッフの方が教えてくれる。伊勢物語なんて日本でもちゃんと見れないのではないか。
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最後に向かったのは国立装飾美術・歴史博物館。あっと言う間に夕方です。
これは元兵舎をミュージアムにしたもの。
戦争の歴史展をやっていたが特筆すべきものはあまりない。
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帰路、チムニー(元ウイスキー蒸留所の煙突を利用した展望台)を見ながら

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ジェイムソン蒸留所博物館も時間切れで外観を見るだけに。
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この日は6時間かけてダブリンへバスで移動。
ダブリンに到着したのは4時過ぎで宿に荷物を置き翌々日のツアーの予約をしたあと、時間があったので街を散策(なにしろ9時近くまで明るいのだから1日が長い)。
最後はパブでアイルランドフォークのライブを聞いた。いつものギネスを飲みながら。聞きながらアメリカのカントリー、フォークのルーツの一つがアイルランド音楽であることに思い当たる。
カントリー・ミュージックはあくまでもアメリカだという思い込みがあった。
ライブを聴いていて昔父親が好きで、よく日曜映画劇場で一緒にみたジョン・フォードやハワード・ホークスの映画の挿入曲がアイルランド・フォークそっくりであることにふと気づいたからだ。
ジョン・フォードはアイルランドの人である。ゲイリー・クーパーもそうではないのか?
そういえばジョン・フォードも片目の人であった。

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キラーニーの宿。ネットも使えず、街からは遠く結構往生した。17世紀の城という言葉にだまされた。おかげでそばに一件だけあるレストランに3日通うはめに。それもまた旅の記憶か。

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ダブリン到着。中央郵便局。
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アイルランド独立の闘士、オコンネル像。
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U2のボノが経営するというクラレンス・ホテル。(ちょっとミーハーですいません。)
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テンプルバー周辺。
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クライスト・チャーチ大聖堂
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聖パトリック大聖堂。工事中で中には入れず。
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イギリス支配の象徴。ダブリン城。
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テンプルバー地区のパブにて。
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女性も思わず踊りだし...。
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8時過ぎ。
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再びオコンネルストリートへ。今回の宿は街の中心部にある。

彫刻家の鈴木さんから良い場所だと推薦してもらったところ。
この半島の雄大さは全く掛け値なしに凄い。日本で言えば阿蘇山周辺に匹敵すると思う(比喩がおかしくてすいません)私たちが訪れた時が好天であったせいかもしれないが、大変おだやかで美しい半島である。空気感があまりにも広大、地球に立っている感覚がある。ギブソンのいう光の肌理とでもいうものを感じる。
ここもゲール語の拠点であり、沢山の神話や伝説が残されているところ。最初の目的は「ダンベックの砦」これは紀元前800年から10世紀まで住居として使われていたもの。もうひとつは7〜8世紀に造られた石の礼拝堂「ガララス礼拝堂」である。船をひっくり返したといわれるこの素朴な建築物だが私たちはこれが見たくてここまで来たと行っても良い。
そして想像通りの美しいフォルムであった。

ディングルは交通の便が悪くレンタカーを利用するかツアーに参加するしかない。 

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ディングル湾に沿って走る
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ディングルの港
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ダンベックの砦
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ガララス礼拝堂
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このカーブが
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ブレーキの壊れた自転車でひたすらサイクリング。
ここはアラン諸島に比べれば天国と地獄のような差である。穏やかな風が流れている。

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ロス城
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とはいえこの樹木の曲がりくねり方(セガンティーニ風)とか森の樹木の高さを比べればその風土の厳しさが自ずと感じられる。

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青銅器時代の住居跡
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どのような環境ならばこのような変形が起こるのだろうか。
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旅先で宿を決めながら移動するのは大変疲れるし、博打的な要素が多分にある。
当たり外れが今の所大変激しいです。
おかげであせって慣れない英語で電話で予約したりするはめになる。旅の最初を英語圏にすべしというのは正しいと思います。サバイバルな状況になると英語は出てきます。多分フランス語やドイツ語はどう転がっても出てこないだろうから。
宿だけじゃない。コインランドリー(約25年ぶりに使用す)のやり方も場所によって異なるし、食事やビールの注文、ツアーの予約、などなど。

ここから先は出発前にあらかじめ旅程を決めていなかったので迷いながら進む事になる。
キラーニーまでは約5時間の移動。
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ちょっと神経症的な(アイリッシュな)いい感じの運転手。
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リムリック

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あまりにもアラン島の印象が強烈だったせいと、多分疲れているせいでゴールウエイでは博物館などを訪れる気がおこらず。街でやっとのことインターネットができる場所を探してメールを確認したりした。

ここでも夜の8時半ころにやっと日が暮れる。海のそばの宿に滞在している。長く続くサンセットは大変美しい。

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アラン島の朝。昨日がうそのように風のない穏やかな朝。

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まるでモネのような。

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うまく言葉にも写真にも現せそうにない。

ストーンヘンジの時もそうだったが巨岩がどうのというよりも、周りの広大な空間と、吹き渡る強烈な風、その目も開けていられないような寒風こそがむしろ強い印象を残したように、さらにここアラン諸島の中の最大の島イニシュモアはもっと強烈なインパクトがあった。簡単にその印象を言葉にできそうにない。
とにかくここにもストーンヘンジとは又別の風が吹きまくり、雨と雹と太陽の光がめまぐるしく交替する。
そして暴力的なまでに岩だらけの大地、3000年近く前から断崖に造られた、塔や壁。皮膚にダイレクトに伝わってくる環境の苛烈さは本当に強烈で写真ではその感覚はうまく伝わりそうにない。ここは一見の価値ありと思った。楽しいとか美しいとかいうのとはまたかなり異なっていて、翌日フェリーでゴールウエイにたどり着いた時は風がなくてほっとしたくらいだけれども、とにかく心に残る環境であった。観光客は多いがその凄さに対してあまり観光地化もされていないように感じた。
烈風のなか坂道を必死で自転車こぎまくったので50才の身にはこたえた。ひざががくがくである。

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ゴールウエイの早朝。太陽は明るい。
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フェリーへ向かうバス。もう雹まじりの雨に変化。
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イニシュモア上陸。朽ちた教会の出迎え。
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この向こうは垂直の断崖だが高所恐怖症の僕はこれ以上近づくことはできない。もちろん下を覗く等はもってのほかである。
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重森三玲はこの風景の事を知っていたのだろうか?
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雨の後に虹が
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かなり完璧なシンメトリーの虹が



展覧会を見ながらふと西脇順三郎のことを思い出した。10代の終わりから20歳代の始めころ西脇の詩に入れあげた時期があったことを思い出したのだ。確か西脇はイエーツの研究を行っていたか、あるいは影響を受けたのではなかったか。イエーツとパウンドとエリオットがほぼ同時代の詩人だったはず。確かな事はもううろ覚えだけれども、思い出したのはそのせいだ。そしてイエーツから何故西脇なのかといえば、今回の長旅の予定の中、一ヶ月以上もギリシアに時間を割いているのは少なからず、30年前の西脇の詩の影響があるように今、ここにいたって思い当たる節があるからだ。ギリシアの神話的古代と現在の侘びた日本の田舎との時空の不思議な交感のようなものを自分は西脇の詩から感じ、大学に入学したての自分は下宿している近所の田舎の木立の中を自転車で走りながらギリシアと自分にとっての神話的原風景である故郷での幼い記憶を重ねつつ西脇のまねをして彷徨ってみたのだった。

永遠の旅人かへらず

(だったか?すいません。これを書いているのはだいたいギネスを飲んだ後か飲みながらなので、いい加減なところがあっても適当に聞き流して下さい)

例えば45歳のころ子供達だけで親に内緒で食べた野いちごの味や、大人のいない切り崩された石灰の真っ白の広大な地面の上、雨の後にできた水たまりを泳ぎ回る無数のオタマジャクシの群れ、その上に映る刻々と変化する夕暮れの空の色などを。

この時、年齢的には幼いはずなのに過ぎていく時間への恐怖を感じた事はしっかり今でも覚えている。

イエーツはアイルランド独立のただ中でゲール語の復興運動を行っていたという。彼も左目を失明している。彼のテキストを改めて読み直してみたいと思った。

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古本屋で12ユーロ。やっぱり少し高い感じはありますね。

まあ、英会話の本を読むより面白いかと...。

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ダブリン、宿泊地そばの公園
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アイルランド国立考古学博物館

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ここは写真が撮れなかった。

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ここは博物館の向かいにある国立図書館内部

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W.B.イエーツに関する大変熱のこもった展覧会が行われていた。
思うところあり。

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イエーツの全テキストの相互関係を示したダイヤグラム

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イエーツの使っていた机(とても小さい)

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バスステーション

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ゴールウエイ



イギリス覚え書き

そもそもこの旅の最初の訪問先にイギリスを選んだのは大英博物館を訪れる為であった。これから行く事になる中東とヨーロッパ全体の場所と時間、文明の見取り図というか大枠をざっくりと俯瞰したく、その為には大英博物館しかなかろうと思ったわけだ。ここを訪れるのは25年前、10年前に続いて三度目となった。今回三日間、時差ぼけをものともせず頑張って通ったが、やっぱりこれまでと似たようなもので「ただざっと見ただけに過ぎないなあ」という印象が残った。本当はもっと長期間じっくり腰を落ち着けて見るべきなのだろう。ただ以前に比べてこちらの知識も増している分、以前より少しはクリアに見えてきたような気もする。

今回、特に印象深かったのは展示物をあちこち移動して見ながら、自分がまるでブラウジングしているような感覚を強く持ったことだ。インターネットにおけるブラウジングと似た感覚である。例えばエジプトエリアを見てギリシアエリアを見た後再びエジプトエリアに戻ったうえで、シリアエリアと比較するなどといった作業だ。パソコンと異なるのは目の前に解像度100%の現物があることと、クリックの代わりにこちらが生身の身体を移動させているということだ。しかし頭で起こっていることは、何と言えばいいか分からないが対象物をインデックス化しているというか、感覚的にはいったんリファランスの状態に持っていっていることは間違いがなく、その点でネット上とさほど差はない。当たり前のことだが現物が本来有るべき場所にあったはずのリアリティはかなり失われている。だからこそ(無駄なことも多分、多いだろうが)この後の私の旅は現地を可能な限りたどっていくことが逆に重要なポイントとなる。(実際、出発前には何人かの人から君の旅は博物館に行けば事足りるのでわざわざ現地に行くのは無駄が多すぎるのではないかと指摘はされた。もちろん僕はそうは思ってないのだが。)

昨年企画したノイラート展と無理に結びつけるつもりはないし、ノイラートやオトレ、ディドロを改めて持ち出すまでもないかもしれないが百科全書とmuseumの登場は必然的に同じものであり、またそれが今日のネットワークの元になったのだと今回大英博物館で改めて強く感じた次第。

今回望外に嬉しかったことが後二つある。ひとつは大英図書館のリーディングルームのパスがもらえたことである。これは一生使えるのだ。その為に今回は二度通うはめになったのだが、二度目に持っていった所属大学の学長名の「こいつの面倒宜しく頼む」的な書類の効き目があったのか、とてもスムーズにもらうことができた。今回は時間が無くそれを有効には使えなかったが(リーディングルームに入っただけでは無意味で、館内に置いてある膨大なリファレンスを使いこなさなければここは意味をなさないところなのだ)今度改めてじっくり準備をして来る事にしたい。ここにあるほとんどの貴重書が直に手に取って自由に見れるなんて信じられない。はっきりいってこんなに嬉しい事はない。世界の財宝を手にした気分だ。始めは厚かましいと思って図書館の特別展示だけ見て帰ろうと思ったのだが妻がだめ元でもパスのこと聞いてみたらと言ったのだった。本の神様が計らってくれたものと信じている。生きている間にこれから何度ここを訪れることができるか分からないが人生の楽しみが増えました。

今回、ロンドンで卒業生の田中(通称ユミッペ)さんに会えたことも嬉しいことの一つだった。彼女はほぼ10年前のゼミの卒業生。私のゼミの二代目の卒業生である。卒業後出版編集の会社に勤務し、その後修士であるロンドンのRCA(ロイヤルカレッジオブアート)のインタラクションデザインコースを優秀な成績で修了、フリーで活躍の後、この5月から北欧に拠点のある某有名企業のシニアディレクターとして働き始めるという。今回話をして大変しっかりしているのを見て感慨無量なものがあった。年をとったせいか私にとっての10年と若い彼女にとっての10年はこうも違うものかという思いもあった。彼女がインターナショナルな仕事環境でデザイナーとして勝負するのはこれからであるが是非頑張ってほしいと思う。今度母校に来て若い学生達に話をしてねと頼んでおいた。それで思ったのはこの旅の直前に送別で来てくれた6年前の卒業生、西沢君はソニーのインタラクション部門、北崎さんはゼロックスのアドバンスデザイン部門でバリバリ活躍している。ユミッペも含めてライティングスペース魂?をもった卒業生が活躍し、それが世界のデザインを変えていくのだなあと実感した。皆まだまだ若いのでこれから苦労は沢山あるだろうけど、初心忘れずに持続してもらいたいと願う。俺も自分なりにがんばらなきゃと思いました。

最後にロンドンの生活について。

噂には聞いていたが本当に(日本に比べると)物価が高い!ホテル、レストラン、地下鉄などは軽く23倍の感覚である。ウイスキーも2倍の感じ。ワインは1.3倍くらいか。唯一安いと思ったのはビール、特にギネス。値段は日本とさほど変わらないがうまさは圧倒的にこちらのほうがうまい。後は良く知られていることだが美術館の多くが無料である事。これは本当に助かった。

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ダブリン市

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