午前中にトルサットの城と教会を訪ねた後、トレンツ一家の車に乗せてもらいザダールに向けて出発。アドリア海の海岸沿いの道を南下していく。
途中、これまで通りかかっていつも気になっていた小さな港町、バカールに寄りフェリー会社ヤドランの古いホテルでお茶を飲む。この小さな港町はもちろん観光ガイドブックなどには載らないけれどクロアチアらしい魅力を持った場所と言えると思う(クロアチアの海岸線を走っているとこのようなおとぎ話に出て来そうな小さな集落というか町をよく見かけるのだ)。実際行ってみると何と言うか時間が100年くらい止まったままのような不思議な感触があるのである。あるいは誰かの短編小説に書かれた架空の港町といったような。
こちら(ヨーロッパ)に来た当初、車を運転するかどうかで迷った末、結局やめたのであるがこういう場所は自家用車でなければなかなか来る事ができない。特にこれまでしつこいくらい触れて来たように公共交通機関が劣悪なクロアチアでは尚更であった。そういった意味で今回の小さな旅は私たちのこれまでの欲求不満を少し解放してくれるものであった。
途中、クルック島、ラブ島、パグ島といったアドリア海に浮かぶ島影を右手に美しい景色の中を走る。途中夕日がパグ島の向こうに落ちて、ザダールに到着したころは新月が昇っていた。
宿には向かわずまずは海岸にあるシーオルガンを訪ねる。かなり冷え込むし暗い中であったがこの装置なかなか良い音であった。
あまり詳しくはないが以下に解説がある。
http://www.seaorgans.com/
ザダールの旧市街はスプリットと似ていてローマ時代からのものであり、ここも想像以上に興味深い街並であった。
海岸の傍のレストランで食事をした後ホテルに向かう。

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バカール。山の上に見えるのは高速道路。

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シーオルガンのヴィジュアル部分は暗くならないと見れない。

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昼間の太陽エネルギーが蓄電されていて音に反応する仕組みである。

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シャッタースピード30秒くらい。

朝方、大学が冬休みになって僕の九州の実家に帰省した長男のセッティングで、小倉の両親の自宅とスカイプがつながった。4月の出発以来はじめて両親、帰省している姉ファミリーとも肉声で話ができた。この旅のあいだ、このブログが手紙代わりということでメールもたまーにしか送ってないので久々の交信である。

いくらしゃべっても電話代がかからないなんて、どうもピンとこないですね。

ともあれ久々に声がきけ、元気そうなので良かった。

親はこちらがいくつになっても親で、ハラハラしながら旅を見守ってくれていることを痛感。

記憶に残っている親父のひと言は「夫婦仲良くしろよ」でした。


夕方ザグレブからトレンツさん一家が車で無事来訪。途中、高速道路は凍結していたそうで心配する。

ミランさんはクロアチアでコミック作家、アニメーターとして活躍後ニューヨークに移動、彼の地でもイラストレーター、絵本作家として活躍。現在はザグレブに戻り、活動のかたわらザグレブ芸大、アニメーション・ニューメディアコースで映像ディレクションの教授をしている。映画「ナイトミュージアム」の原作絵本の作家としても有名である。今回大学から無理をして資料を送ってもらったのも、このミランさんを通してザグレブ芸大とクロアチアのアニメーション協会などとアニメーションや映像教育に関する交流を行う為であった。(旧ユーゴスラビア時代からここはアニメーションが盛んなところなのです)

奥さんのアキコさんは前回ここにも書いたが114日ザグレブのHDLUクロアチア芸術協会美術館のフランチェスキさん、コレクターのスダッチさんを訪ねたおり通訳をして下さった方である。

http://www.esporre.net/terayama/2008/11/

始めはアキコさんの旦那さんがトレンツさんであるとは全く知らなかったわけで、全く不思議なご縁を感じます。リエカもそうだがザグレブも僕にとって不思議な出会いに満ちた都市である。

アキコさんには正月のザグレブ芸大での僕のレクチャーでもまた厚かましくも通訳をお願いしている。

前回から話に出ていたザダールのシーオルガンを見に行く計画が今回実現したのだ。


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トレンツ一家

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アキコさんは日本でデザイナーをした後、アメリカのシアトル、ニューヨークで作家として活動。子育てが一段落した後、ここクロアチアで活動を再開されたという。写真は彼女から送ってもらったもので5月の展覧会の様子。これは3年がかりのプロジェクトでスロベニアとの国境沿いの村の伝統工芸者とのコラボレーション作品である。レースによるテント。実見してはいないが途方もない時間をかけたインスタレーション作品である。

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1000本のボビンによって作られたテント。サウンドインスタレーションとして映像もあるようだ。

今日は森田さんのリエカでの滞在最終日となる。彼は朝早く家を出てクルック島、バシュカに向かう。
我々は家に籠りそれぞれの仕事。僕は少し風邪気味。
森田さんは東京出身だけど中高生時代は東北や北海道で育ったという。そのせいか雪が恋しくて、最初はインフォメーションセンターでもらった地図にあったリエカ近くの「アドリア海が見れるスキー場」に行きたいと考えたのだったが、例のごとくバス便が皆無で断念。それでクルックに変更したのだった。
夕方帰って来た彼から話を聞くとなんとバシュカの山の上にある教会(私たちは行かなかった)まで行って来たとの事。あそこはかなり急な岩山でしかもこの寒風の中よく行けたものだとあきれる。
しかも彼はここに滞在中、毎日あのペタルクジッチの階段を平然と往復していたのだ。
私たちも旅先では年齢の割にはぎりぎりのところで、かなりハードに動き回っているつもりだが、30代なかばとはいえ彼の元気さに感心する。
「何事も身体で感じることが大事だと」と彼が言うのを聞いてやっぱり彫刻科出身だなあとも思う。
ともかくも彼はクロアチアの人も環境も気に入ったようで良かった。
来年はもっと良い季節に展覧会の予定があるとのこと。
春か夏に来れば多分もっと気に入るだろうと思う。




午前中、荷物が届いたとの連絡があり、マイーダさんの車でダリンカさんと共に街の郵便局へ。
なんと荷物は三つに分けて送ったらしいのであるが一つはぼろぼろに壊れて原型を留めず、もう一つは完全に行方不明となっていた。僕の心配が結局は的中した。送られた本は皆水に濡れたようで傷がついてよれよれになっている。
最もショックだったのは8枚のDVDが全て失われていたことである。
ここ数日、この荷物のことが心配で頭を悩ませていたが最悪の事態である。
郵便局の説明などは長くなるので省略するがクロアチアに到着した時点でこのような状態だったという説明であった。
何とも言いようがない。
N先生が無理して送って下さった次の便が無事である事を祈るのみとなった。

今日の夕食は森田さんが手料理を作ってくれ、ごちそうになった。
(かれはドイツで一人暮らしであるが食事はしっかり自分でつくっているとのこと。さすがに上手です。)
今回、彼とは作家活動について、これまで受けた美術教育について、サウンドデザインについて他、ゆっくりと沢山の話ができてとても良い刺激を受けました。

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クリスマスというのは25日と26日の二日ということを知った。
森田さんは午前中からひとりでリエカ探索のため家を出ている。
お昼過ぎ、日本で忘年会をやっているK先生、O先生からメッセージがJ先生の携帯から届く。
僕らの健康を祈念して乾杯をして下さったとのこと。
感謝感激です。
つられて昼間から僕もワインが飲みたくなったがそうもいかない。午後からソボルさんがやってきて僕の講義用英文の添削作業をいっしょにやる。まじめに英語の勉強です。

夕方、大家のダリンカさんにダルマチア式クリスマスのパーティーに招かれる。
マイーダさんの妹のイヴァさん一家も帰省してきてにぎやかである。ユーリッチさんもダリンカさんも孫に会えて嬉しくてしょうがないといった感じ。こういうのは世界共通のことですね。
長時間かけてタラで作ったパテ、自家製のパン、生ハム、オリーブ漬けをワインでいただく。
遅れて帰宅した森田さんも合流する。

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昨日のイブもそうだが、クリスマスといっても街はとても静かである。どちらかというと日本のお正月の朝の雰囲気に近い。
このクリスマスの期間、街には東京のように騒々しい、ジングルベル他クリスマスソングなど流れていなかったし、フジヤのケーキを売ってるような風景は皆無である。
昨日の夕方は街ではカフェに若干人がいて、流しのような人と演歌のような民族音楽を皆で歌っているくらいであった。
ドイツのクリスマスマーケットでも同様に静かで、東京というか日本がいかに音が野放しになっているかを実感させられる。
森田さんがサウンドデザインが専門なのでそのことについていろいろ考えさせられた。

今日は午前中いつものように森田さんを近くのお城と教会、街の中心まで案内した。後は彼は自由に歩き回ることになっている。
僕はその後自宅で勉強。

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夜は目が覚める程の強風であるが昼間は良い天気である。トルサット城にて。

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トルサットの聖母教会にはお参りの人が沢山いた。


とっくに届いているはずの荷物が届いてない事に昨日から憂慮している。1月のこちらでの講義の為に送ってもらった資料である。

昨日、今日と東京のN先生にメールし確認してもらう。先生が確認した結果、送付を頼んだ大学のある部署が、なるべく早く確実にと依頼したにもかかわらず、普通航空便で送った事が判明。これでは現在荷物がどこにあるのか確認もできないのだ。中には大事な書籍やDVDに納められた映像作品もあるのに信じられないことでショックを受ける。

年末にザグレブ芸大のアニメーションを教えている先生に会う予定で、そのためにもかなり以前から依頼していたものだったのだ。

その後、今日になって経過を知りあきれたN先生とゴンちゃんがなんと再度荷物を梱包し送付し直す作業をして下さったと連絡が入る。

彼らが僕にとって今年のサンタさんになってしまった。全く申し訳なく、言葉もないとはこのことだ。


夕方ザグレブからやってくる森田さんをリエカ駅に迎えに行く。

以前ここにも記しているが森田さんとはリンツで出会い、ベルリン芸大サウンドデザイン科を訪ねた際お世話になっている。彼は今回ザグレブで行われた「TOUCH ME HERE」というユニークな展覧会に招待され23日まで展示していたのだ。その展覧会を今日撤収し我が家に寄ってくれるのだ。


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森田さんの作品がポスターになっていた。随分人が来て熱気のある展覧会になったそうだ。

早朝の飛行機にてケルン・ボン空港からリエカ空港へ。 
普段は飛んでないのだが、クリスマス帰省用の特別便でほぼ満席であった。
旅先で購入したり、頂いたりした本で荷物が異常に重くはなったものの無事帰還。
私たちが出かける前と打って変わって、クロアチアはここ数日好天に恵まれていたらしい。
朝からすでに夕方の気配を漂わせているようなドイツからアルプスを超えてこちら側に来ると、その光がこうも違うのかと思う程の差異があることに驚く。ゲーテに限らず、北方ヨーロッパの人間が南に憧れる理由が実感としてよくわかった。劇的といっても良いくらいだ。ドイツではつい「もっと光を!」と言いたくなるような暗さだったのだ。
しかも今日はここに住んでるダリンカさんでさえ「素晴らしい眺め!」とわざわざ言うに相応しい変幻自在のアドリア海の海と空の色であった。
帰ったら洗濯機が何故か故障していた。クリスマス休暇で修理も頼めず、3階の大家さんの洗濯機を借りる。

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飛行場のあるクルック島を渡る。海がまるで湖のように静かで空よりも明るく光っているのだ。

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小春日和といっても良いような暖かさである。

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翌日の帰りの飛行機が早朝なのでフランクフルトからケルンへ列車で移動。
夕方街を散策。

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ケルン大聖堂

午前中トラムに乗って、モダンアートミュージアムへ。ここの建築はホラインである。常設展が目的だったのだが、何と全館を使用して村上隆氏の大展覧会をやっていた。実は僕は彼の作品をこれまでほとんど見た事がない。こういう機会でもなければ見る事はないだろうから結果的には良かったと思う。(全く自慢にはならないが僕は普段日本では出不精の上、ここ10年近くの日本の現代美術の動向に全く疎いのである。)

その後、応用工芸美術館、建築博物館を見る。

フランクフルトには他にも自然史博物館、前史先史博物館、シルン美術館、世界文化博物館と面白そうなミュージアムがあったのだが、まあ二日ならばこんなところであきらめるしかない。

......グーテンベルク博物館にもう一度行くべきだったかもしれない。


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以下モダンアートミュージアム。最初見た時MURAKAMIという名の商社ビルだと思いました。


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左手はシルン美術館。マグリットをやっていた。


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以下応用工芸美術館。家具などのモダンデザインとアジアを含めた世界の工芸の紹介。


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以下建築博物館。ここは期待が大きかっただけにちょっと...。建物は3つの階層に分かれ2007年度の高層建築世界一のコンペ、エコロジーと建築をテーマにした100の提案、最新のヨーロッパ各都市の都市計画といったものであるがどれも中途半端というか、雑誌の特集を読まされているような気がした。


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常設展らしいところで世界の都市の歴史の模型を展示しており、これはおもしろいかと思ったが途中で尻切れとんぼになってしまった。今回の旅で私たちの行った場所の模型があったのは個人的には興味深かったが。


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疲れ果てて足を引きずりながらの帰路となった。


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橋の向こうがシュテーデル美術館、ミュージアム通り。


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